Click Icon or Scroll up

Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2017-06-11

中原中也「頌歌」


中原中也「未刊詩篇」より





頌歌


出で發たん!夏の夜は
霧と野と星とに向つて。
出で發たん、夏の夜は
一人して、身も世も輕く!
この自由、おゝ!この自由!
心なき世のいさかひと
多忙なる思想を放ち、
身に沁みるみ空の中に
悲しみと喜びをもて、
つつましく、かつはゆたけく、
歌はなん古きしらべを
霧と野と星とにれて、
歌はなん、夏の夜は
一人して、古きおもひを!

       (一九二九・七・一三)


中原中也 1929 未刊詩篇


出典:中原中也全詩集 P.464 1972 角川書店

注)かつは = 一方では
注)ゆたけく = 豊けく ゆったりと 豊かに
注)…なん = …なむ〔強い意志〕必ず…しよう


0 件のコメント:

コメントを投稿

      ********** 投稿要領 **********
1. [公開] ボタンは記入内容を管理者宛に送信し即公開はしません
 (サイト劣悪仕様により当該文字列変更不能)
2. 非公開希望の場合もその旨記述しこのボタンで送信して下さい
3. 送信された記述内容は管理者の承認を経て原則公開されます
4. 反公序良俗, 政治的偏向過剰, 宣伝, 広告, スパム等は不可
      **********************************