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Cogito


東明の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の、こだまし、雲に入り、野末にひびき
海の上の風にまじりてとことはに過ぎゆく如く……

2016-09-29

中原中也「朝の歌」


「山羊の歌」より





朝の歌


天井に あかきいろいで
戸の隙を 洩れ入る光、
鄙びたる 軍楽の憶ひ
手にてなす なにごともなし。

小鳥らの うたはきこえず
空は今日 はなだ色らし、
倦んじてし 人のこころを
諫めする なにものもなし。

樹脂じゅしの香に 朝は惱まし
うしなひし さまざまのゆめ、
森竝は 風に鳴るかな

ひろごりて たいらかの空、
土手づたひ きえてゆくかな
うつくしき さまざまの夢。


中原中也 1907-1937「山羊の歌」- 初期詩篇 より


出典:中原中也全詩集 P.18 1972 角川書店

注)鄙びたる=ひなびたる
注)憶ひ=おもい
注)はなだ色 = 薄い藍色
注)倦んじ=うんじ 諦める 嫌になる
注)諫めする=いさめする いさめること 忠告 諫言
注)森竝 = 森、林、など


改訂: 2018.04.18 レイアウト変更 プロパティ変更 ルビ有無訂正 新旧仮名遣い訂正 注釈加筆



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